指導者が押さえておくべきは、最低限の基本技術です。
しかし、それは意外に難しいことです。
基本を疎かにしても、才能のある選手は、ある程度のところまで強くなってしまうことがあります。
しかし、それが伸び悩みの原因になるかもしれません。
一流選手もはじめは初心者
普段、卓球に関わりを持たない人が、温泉などの保養施設や児童館などで卓球をしているシーンに遭遇すると、とても驚かされます。
打ち方も様々、例えば、ペンホルダーのラケットの裏面の指は、素人さんは、ほとんど指を広げます。卓球の基本さえ学んでいないとあのような間違ったスタイルになるのでしょう。
『卓球』という競技の認知度とは裏腹に、卓球の基本的な技術について、一般の人々は、ほとんど知らないと言っても良いでしょう。
サービスの方法さえしらない人も少なくありません。(ボールを自コートにワンバウンドさせてから打ったり、テニスのように相手コートに直接放り込んだり…)
トッププレーヤーのプレイを見られる機会はそれ程多くない
最近は、福原愛選手や石川佳純選手の活躍などもあり、テレビでも卓球のトッププレーヤーの映像を、一般の人々が目にする機会は随分増えました。
それでもやはり、遊びの卓球で素人がいきなりボールにドライブをかけて打つのは稀でしょう。
このように、依然として一般の人々にとっては、一流選手の生のプレイを見る機会や映像の情報量が少ないのが卓球の現状です。(youtubeがありますが一般人は検索してまでは見ないでしょう。)
このような状況の中で、卓球の指導者は、非常に重要なポジションにいる事を自覚する必要があります。
迷った時に戻って考え直す場所
どんな一流選手でもスタートは一般人と一緒です。ワールドクラスの選手達も温泉卓球の人々と同じ位置からスタートしたのです。
そして、上達を目指す人々が、必ず通らなければならないのが、『基本』を身につけるということです。
一流選手の中でも、独創的で真似の出来ないようなプレイスタイルの選手がいますが、そんな彼等でもまず初めに基本を学ぶ事から始まったのです。
基本とは「幹」のようなものです。選手が迷ったり、スランプになったりした時に、一旦立ち戻って考えを整理することが出来る、拠り所の役目をしてくれます。
大勝負の場面でこそ地道な基本練習が活きてくる
基本を疎かにして先へ進んだ選手は、いずれ壁にぶつかる時が訪れます。基本を疎かにしたまま、先へ進んでしまったせいで、それが、その選手の見えにくい弱点となり、一世一代の大勝負の局面で大切な勝利を逃してしまう。
そういう事態にならぬよう、選手もコーチも、他愛もなくつまらないと思われるような基本の中の基本の練習でも疎かになるような事がないような練習メニューを考える必要があります。
選手も納得して取り組める基本練習の方法の構築
ビギナーを脱して、ある程度、卓球が分かってくると、選手達は自ら技術の吸収を求めはじめ、見様見真似でトッププレーヤーの得意ワザを身に付けようとチャレンジし始めるでしょう。
それ自体はとても良い事ですし、将来その選手の最大の武器になるかもしれません。
しかし憧れの世界的な選手の得意ワザも、実は地味な基本練習と地道な肉体的トレーニングが下地としてある事。
その大事さをコーチとして、選手達に理解をさせた上で練習をする事と、闇雲に地味な基本練習をするのでは、同じ練習をするにしても、選手のモチベーションはずいぶんと違ったものになるでしょう。
そのようなモチベーションを落とさない基本の練習方法を、指導者は考えていかなければなりません。
あなたが考案した基本練習方法が、よくよく考えると、効果的でなく、選手達が内心では「???」の状態でボールを打っている。
なんていう事態が、あなたの気づかぬ間に起きているかもしれません。
そんな時は、一流校のコーチの練習法に1度目を通しておく事も悪くはありません。
指導者としてスタートしたばかりなら、名門校の練習をまるごと真似したってかまわないでしょう。
「名門校もこの基本練習をやっている!」
ちょっとずるいセリフですが、それも間違いではないでしょう。